(7)2004年9月8日 朝刊 3経済 010 00986文字

「企業の責任」国際規格化 日本の産業界も参加へ
 国際標準化機構(ISO、本部・ジュネーブ)がCSR(企業の社会的責任)=キーワード=の国際規格をつくることになった。これまで「欧米の価値観を押しつけられる」と消極的だった日本経団連など日本の産業界も、自分たちの意向を規格作りに反映させたほうが得策と判断、姿勢を転じている。
 
 CSR規格は、「雇用で男女差別していないか」「児童労働にかかわっていないか」「地域の環境を汚染していないか」といった基準を設け、この基準を満たした企業にこの規格を与えてCSRを満たしている、とお墨付きを与える制度。
 今後の議論では、何を基準とするのか決めるほか、企業の申請に対し、ISOがどうチェックするのか、といった点も詰める予定だ。秋から論議を本格化させる。
  ISOは6月下旬ストックホルムで開かれた会合でこの規格作りを決めた。ISOはもともとは、工業品部品の規格を統一することで製品の国際流通を促進して きた組織だ。その後、品質管理や環境問題の規格化にも乗り出し、「マネジメント規格」も導入。ISO9000やISO14000といったものに結実してい る。
 ISOに先立ち、アナン国連事務総長の呼びかけで、企業の社会的責任について経営者が国連に直接約束する「グローバル・コンパクト」が00年から発足している。人権侵害の防止や環境保護、贈賄などの腐敗防止など10項目の順守を企業に求める内容。
 ISOのCSR規格も、そうした流れに沿うもので、欧米のNGO(非政府組織)などが「企業のもうけ方」を問題にするようになっていることも背景をなしている。
 日本経団連の関連団体である海外事業活動関連協議会は「規格づくりに日本が参画しなければ、欧米の価値観にもとづく規格になりかねない」(深田静夫企画部会長)と話す。また、麗沢大学の梅田徹教授は「CSRはいまや国際基準になっている。ビジネスの国際展開や外国人株主の増加につれ、日本企業は正面から取り組む時にきている」と語る。
 
 ◇キーワード
 <CSR>  Corporate Social Responsibilityの頭文字。企業の社会的責任。法令を順守することに加えて、適正な労働条件、人権保 護、環境保全など、企業が従業員や地域社会、一般消費者に対して果たすべき責任を指す。「よき企業市民」であることが求められるようになって、CSRに対する関心も高まっている。